予防と健康管理レポートブロックレポート
1. はじめに
予防と健康管理ブロックの講義において、うつ病に関してのビデオを鑑賞した。現代社会において問題となっている精神疾患の中でも有名なうつ病と人間の生理的反応との関連について興味を持った。そこで本稿ではうつ病とその生理作用、特にコルチゾールとの関係について調べることにした。
2. 選んだキーワード
“うつ病”、“コルチゾール”
3. 選んだ論文の内容の概略
「うつ病の神経内分泌研究」
著者:功刀 浩(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第三部)
出典:医学のあゆみ Vol.219 No.13 P.1035~1041
Cushing症候群や甲状腺疾患などの内分泌疾患が気分の異常を含む精神症状を呈しやすい事は、古くから知られている.気分障害においては様々なホルモンとの関連が探られており、視床下部?下垂体?副腎皮質系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis : HPA系)、視床下部?下垂体?甲状腺系(hypothalamic-pituitary-thyroid axis : HPT系)、視床下部?下垂体?性腺系(hypothalamic-pituitary-ginadal axis : HPG系)、さらに成長ホルモンやソマトスタチン、オキシトシン、プロラクチン、その他数多くの神経ペプチドについて研究されている.この中で、ストレス性精神疾患であるうつ病の生物学的所見として最も再現性が高く、かつ圧倒的に研究数が多いのは、HPA系の異常に関するものである。
視床下部?下垂体?副腎皮質系(HPA系)
1.
HPA系の構造
HPA系は、フィードバックループをなしている.視床下部室傍核のコルチコトロピン遊離促進ホルモン(CRH)ニューロンから、下垂体全容の毛細管へと繋がる門脈系にCRHを分泌する。門脈を通る事により全身循環で薄められる前に下垂体前葉に達したCRHは、CRH受容体に結合してcAMP依存的に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促進し、ACTHは体内循環を経て副腎皮質からのグルココルチコイド放出を促進する.一方、グルココルチコイドは過吹田、視床下部、さらに高位の海馬などのグルココルチコイド受容体を介してACTHやCRHの放出に負のフィードバックを与える.CRHニューロンはアルギニン?バソプレシン(AVP)も分泌し、AVPもV3またはV1bとよばれる受容体を介してACTHの分泌を促進する.なお、オキシトシンは下垂体からのACTH放出に抑制的に働く.
2.
うつ病とHPA系
うつ病におけるHPA系の機能亢進を示す比較的一致した所見としては、少なくとも一部のうつ病ではグルココルチコイドの分泌が増大しており、コルチゾールの血中濃度、24時間尿中のフリーコルチゾール排出量、脳脊髄液中の濃度などが上昇していると言う報告が多い.このような研究結果と一致して、うつ病やそれによって自殺したものでは副腎が肥大しており、また、副腎皮質におけるACTHへの反応が亢進していると言う報告がある. CRHの分泌過剰を示唆する所見として、うつ病では統合失調症患者、認知症患者、健常人と比較して脳脊髄液中のCRH濃度が高いことが挙げられる.また、自殺者の死後脳では前頭葉におけるCRHの結合部位の減少が観察され、これはコルチコステロイドの過剰により負のフィードバックが起こった可能性や、CRHが過剰である事によりCRH受容体のダウンレギュレーションが生じている可能性が推測されている.
3.
HPA系のフィードバック異常を検出する検査
うつ病患者には合成グルココルチコイドであるデキサメタゾンを負荷して、ACTHとコルチゾールの分泌抑制をみるデキサメタゾン抑制テスト(DST)で異常、すなわち非抑制を呈するものが健常人と比較して多い事は、臨床的にきわめて重要な所見である.これは、PHA系の負のフィードバック機構が障害されている事を示唆する.精神疾患を対症としたDSTとは種々あるが、通常は前夜23時にデキサメタゾン0.5mgまたは1mgを経口投与し、検査当日1?3回、時刻を変えて採血を行い(最も簡便に行う場合は16時に1回採血)、血漿コルチゾールを測定する(できればACTHも測定)。健常人ではデキサメタゾンによってコルチゾールやACTHの分泌は約24時間抑制される事から、コルチゾール値が5μg/?以上を呈した場合は非抑制と判定する.
DSTは内因性うつ病の診断に有用である可能性が期待されたが、感受性が概して高くない事や、うつ病以外の他の精神疾患においても非抑制例が少なくない事などから、日常臨床におけるルーチン検査に用いられるに至っていない.しかし、特異性が高い事、DSTで非抑制であった者も治療によって回復した後に再度DSTを施行すると抑制に転じる事などから、診断や治療経過の指標として臨床的に有用である事は確かである.また、再発予後や自殺行動の予測因子となる可能性なども示唆されている.
これに対し、DSTとCRH負荷テストを組み合わせた“DEX/CRH テスト”があり、従来のDSTに比べて感度が高いテストである(~80%).なお、女性は男性よりDEX/CRHテストに対するコルチゾール反応が概して高く、また、年齢が高まるとこるチゾール反応が高い.これは女性や高齢者でうつ病の発症率が高いことと関係があるかもしれない.
4.DEX/CRHテストと臨床要因
外来うつ病では入院患者に比べて異常の程度が弱いと言う報告があり、これは state marker であることに一致するが、DEX/CRH所見とうつ病の重症度(ハミルトンうつ病評価尺度のスコアなど)が相関するかどうかについては肯定的な報告と否定的な報告がある。また、慢性うつ病患者ではコントロール群とあまり差がないという報告がある.一方、退院時にDEX/CRHテストで高値を呈した入院患者はその後の再発率が高いという報告もある.反復性うつ病は初回うつ病に比較してDEX/CRHテスト所見の異常が強いという報告も複数あるが、日本の多施設研究ではそのような傾向は見られなかった.気分障害の親族でもDEX/CRH所見でHPA系の機能亢進を示す者が多いという報告もあり、これはむしろ trait marker である可能性を示唆するが、より最近に発表された調査によれば否定的である.大部分の抗うつ薬の投与そのものはDEX/CRH所見に影響を与えないとされるが、mirtazapine(日本では未発売)ではコルチゾールの分泌を抑制する作用があり、薬物の投与そのもので臨床作用が改善していなくてもHPA系が改善したという報告がある.気分安定薬であるリチウムやカルバマゼピンはDEX/CRHテストにおけるHPA系反応を高める作用があるので、これらの薬剤を用いている患者に対してテストを行っても解釈が難しい.
5.
HPA系異常と関連する新たな抗うつ薬の開発
うつ病の病態にHPA系が関与することに基づいた新しい抗うつ薬の開発が進行している.CRHの過剰がうつ病の一時的発症要因となる可能性が示唆されており、CRH受容体アンタゴニストがうつ病治療薬の候補として開発され、臨床試験により検証されているAVP受容体拮抗薬は、少なくとも前臨床段階まで進んでいる.また、グルココルチコイド受容体(GR)拮抗薬も次世代の抗うつ薬として期待されており、mifepristoneの臨床試験では精神病性うつ病の精神病症状に対してプラセボと比較して有効であるという報告がある.また、コルチゾールの合成阻害剤(metyraponeやketoconazoleなど)が難治性うつ病の治療に試みられており、プラセボとの二重盲験の結果によればmetyraponeは抗うつ薬に付加的に用いると抗うつ薬への反応を高め、効果の出現も早まるという(Jahnら、2004).Ketoconazoleは血中コルチゾール値が高い患者に対しては有効であったという報告がある.
視床下部?下垂体?甲状腺系(HPT系)
1.
うつ病におけるHPT系の異常
甲状腺ホルモン(T3,T4)についても、視床下部の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が門脈系を経て下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の合成と分泌を促進し、それが全身循環によって甲状腺に達し、ホルモンの分泌を促す.そして甲状腺ホルモンは負のフィードバック機構によって各上位ホルモンの調節を行い、HPT系を形成している.気分障害の一部(およそ20?30%)に何らかのHPT系の異常が見られるとされる.
TRH(200?500μg)を形状脈的に投与した後のTSHの反応を見るTRH負荷試験では、通常,原発性甲状腺機能亢進症でTSHの低反応,機能低下症で過剰反応がみられるが、うつ病患者のおよそ25%では甲状腺ホルモン(T3,T4)やTSHの基礎値が正常範囲内であっても、TSHの低反応がみられる.このTRH負荷試験への低反応のメカニズムは未だに議論のあるところであるが、低反応を示すうつ病ではTRHの分泌過剰があり、それによって下垂体のTRH受容体のダウンレギュレーションが生じている可能性が示唆されている.
一方,上記とは対照的に、15%のうつ病患者はTRH負荷試験に対して過剰反応を示したという報告もある.この様な反応を呈する患者のなかには抗甲状腺抗体を持つ無症候性自己免疫性甲状腺炎を呈するものが多く、これと一致してうつ病者では一般人口と比較して無症候性自己免疫性甲状腺炎の罹患率が高いことを確かめた報告もある.
2.
抗うつ薬治療と甲状腺ホルモン
抗うつ薬治療において反応者は非反応者に比べてT4レベルが高く(正常範囲内で)、治療に反応するにつれてT4レベルが低下することが知られている.抗うつ薬治療を行う患者ではまず甲状腺機能のスクリーニングを行うことの有用性が指摘されている.
甲状腺ホルモンの併用は抗うつ薬の治療効果を増強する為、臨床に用いられている.三環系抗うつ薬に反応しなかった51例にT3,リチウム、プラセボのいずれかを併用したところ、前二者は50%強の患者が反応し、プラセボと比較して優れていた.一方,効果発現が早まるかどうかについては、方法論的に優れた6つの二重盲験プラセボ比較試験のうち5つの研究で効果発現が早まるとする結果が得られており、また、男性より女性の方が甲状腺ホルモン併用の恩恵を受けやすい可能性が示唆されている.
視床下部?下垂体?性腺系(HPG系)
女性は男性に比べてうつ病の罹患率が2倍程度に高まることはよく知られている.また、女性では月経前,産後、更年期などの性腺の活動変化によりうつ病の発生率が高まる.一方、更年期から閉経期のうつ病に対してエストロゲン補充治療法が有効であることが知られている.うつ病女性ではエストラジオールが低下しており、うつ病男性ではテストステロンの低下が報告されている.男性も高齢になるに従ってテストステロン値が低下し、うつ病を発症しやすいことが明らかになっており、男性にも“閉経”がある可能性が注目されている.こうした所見はHPG系の異常による可能性もある.HPG系の機能をみる負荷テストとしてLHRH(luteininzing hormone-releasing hormone)テストがあり、LHRHを静脈注射後のLH(luteinizing horomon)、FSH(follicle-stimulating hormone)の反応を経時的に測定する.低反応,過大反応のほか、ピークの時間が60分後以降になると遅延反応と判定する.しかし、うつ病患者に対するLHRHテストでは男性、女性とも異常を示さないという報告が.上記のホルモンの異常は、HPG系というよりHPA系による生殖行動の抑制作用が関与しているのではないかと考えられる.
「うつ病治療の現場から(治療薬の問題点と望まれること)」
著者:白山幸彦
出典:日薬理誌(Folia
Pharmacol. Jpn.)127,209?212(2006)
うつ病は臨床の現場でよく見られる疾病であるのは、それぞれ身体症状を伴う為である.うつ病と診断された場合には薬物療法が行われる.通常使用される抗うつ薬の効果の発現には数週間を必要とし、患者さんはその間我慢せねばならない.また、3割程度は難治性であり、別のタイプの薬に変更した場合更に数週間を必要とする.すなわち患者さんにとってはどの薬を投与されるかは大問題である.
うつ病治療の現場には、うつ病と打つ状態が多く含まれている.うつ病でないうつ状態には、血中コルチゾールが高値になることから生じるクッシング症候群や、甲状腺ホルモンが低下する甲状腺機能低下症や、ドパミン機能が低下するパーキンソン病や、脳梗塞後遺症として生じるものや、失恋した後の心的反応、等がある.診断の際には、身体的基盤のある中枢性うつ状態と症状性うつ状態をきちんと鑑別しておいてから、内因性うつ病を考えなくては行けない.すなわち、中枢性(脳腫瘍や脳梗塞後遺症による精神症状)や症状性(クッシング症候群や甲状腺機能低下症の様に、その疾患によるホルモン以上によって生じるうつ状態)でないことを確認してから、内因性(本来の原因不明のうつ病)を考え、人格障害(生まれながらに、健常人よりも気分が暗い人や、些細なことに敏感で傷つきやすい人)の関与を気にして、それらが否定されてからようやく心因性(恋人に降られた心的ショックに対する反応)について考えていく.今日では生化学や内分泌のラボデータが正常域内であると、容易に中枢性や症状性の可能性は否定される傾向にある.患者さんの生活史、性格,ストレス状況も考慮されるが、抑うつ気分と意欲低下が精神症状の中心をなし、睡眠障害,食欲低下,性欲低下と言った身体症状を伴っていれば、うつ病と容易に診断される.対象となる疾患の範囲が広くなっている中で、薬物の治療反応性が議論されることになる.
甲状腺機能低下症によるうつ状態では抗うつ薬よりも甲状腺ホルモンの方が有効である.また、クッシング症候群によるうつ状態ではコルチゾールが高値であるが、その原因を除去することが治療である.一方、内因性のうつ病患者さんの甲状腺ホルモンやコルチゾールの血中濃度が正常範囲内すれすれの場合には、甲状腺ホルモンやコルチゾールがうつ症状に対して修飾因子として働いている可能性は十分ある.うつ病患者さんに血中フリーT3の低値はよくみられる所見であり、甲状腺系とセロトニン系は関係することが知られている.抗うつ薬が無効のときに、甲状腺ホルモンを増強療法として用いることはある.しかし、通常のうつ病において甲状腺ホルモンがどんな場合に関与するのか、薬物選択の際の基準には含まれていない.
うつ病患者さんのコルチゾール血中濃度は高いことが多く、デキサメサゾンによる抑制が不十分であることが多い.視床下部・下垂体・副腎系が亢進している為と考えられている.自殺企図者には血中コレステロール低値を示すものが多いとの報告がある.一方、うつ病患者さんのデヒドロエビアンドロステロン血中濃度については、減少する報告と増加する報告があり、結果は一致しない.デヒドロエビアンドロステロンを経口投与することでこううつ効果がみられたとの報告がいくつかあり、この場合には投与して改善したのだから、うつ症状にはデヒドロエビアンドロステロンの低値が直接的な原因になっていたと考えられる.デヒドロエビアンドロステロンはドパミン放出を促進し、GABA受容体に抑制的に働く.難治性のうつ病患者さんにドパミン作動薬が有効のことがあるが、類似の作用機序かも知れない.コルチゾールはデヒドロエビアンドロステロンの合成を抑制し、デヒドロエビアンドロステロンはコルチゾールの効果を抑止する.すなわち、いずれかが優位になると、もう一方は抑制的な制御を受ける関係である.一方,デヒドロエビアンドロステロン血中濃度が高値を示すうつ病患者さんでは、その後に抗うつ薬や電気けいれん療法が有効であった場合には、デヒドロエビアンドロステロンの高値は改善するとのことである.この場合には、何らかの原因に対して代償的に働いていたとの解釈も可能である.デヒドロエビアンドロステロンとコルチゾールの2つは相互に影響する為に、その比は2つのバランスを意味することになり、測定誤差を超えた鋭敏さを持つマーカーになる可能性がある.それぞれにホメオスターシスが働くのであるが、それが破綻するときに精神症状が出てくる可能性がある.興奮性と抑制性のバランスが崩れているとの考えもあり、その場合にはいずれかを調節することで、治療効果を得ることが可能になると考えられる.
血中テストステロン濃度が低下すると、抑うつ気分が生じるとの報告は多くみられる.うつ病患者さんでも特に中高年例では症状が重い程テストステロンの血中濃度が低いことが明らかになった.抗うつ薬とテストステロンとの関係は明らかになっていないが、テストステロンはコルチゾールの産生を抑制することが知られている.テストステロンとコルチゾールもお互いに制御しあう関係であるが、下垂体のACTHも含めて、症状との関係があるかもしれない.
4.考察
うつ病、と聞くとそれは心理的な病気であり、その要因や反応も心理的な範囲に留まると言う偏見が現代社会には根強く残っている。講義において視聴したビデオでも、うつ病患者の社会復帰は周囲のうつ病に対するただしい理解が必須であろうことは容易に伝わってきた。うつ病はその人の心の弱さが原因なのだから患者は精神的に強くなれ、としか周囲が認識してくれない場合、うつ病患者はまず有効な対策を得られないだろう。うつ病の患者を治療する為には、うつ病の要因は様々であり、その生理的な仕組みを理解することが重要である。
まず、うつ病を診断するのにどのような所見がみられるのかが疑問であった。そこで、上記の2つの文献を選んだ。一言でうつ病と言っても様々なものがあり、その原因も種々あった。中枢性うつ状態と症状性うつ状態を鑑別し、それから内因性うつ病などを考える。この時、血液検査により特徴的なマーカーから個人に一番望ましい治療法、薬剤選択をする。どちらの文献でもコルチゾールを含めたHPA系の異常に重きを置いているが、うつ症状の鑑別にはこれが最も重要だと思われる。DEX/CRH試験で正常でもうつ症状を呈する場合があることも多く述べられているが、人の曖昧な精神状態のみで判断するより、適切な治療の指針となることは確かである。また、治療後の予後をある程度予測出来ることも重要である。
将来、医師としてうつ病に関わることは、どの科に関わらず多いことがこれらの文献から読み取れる。うつ症状が生理的な要因でも起こる疾患ということは、それが様々な身体症状、精神症状として現れると書いてある訳であるから、うつ病に対する正確な知識を持ち合わせた上で診断出来るよう備えておく必要があると深く感じた。また、再発性の高い疾病でもあることから、患者のその後の経過を定期的にみる必要を感じるが、果たして今の医療体制でどこまでそれが実現出来るのかは疑問である。再発してからまた外来にやってくるのではなく、再発を防ぐ為の外来、つまり予防医学の観点からもこの疾病は重要だと思われる。
4.
まとめ
今回、このレポートを作成するにあたって、うつ病という疾病は私にとって精神科領域のみ、つまり心理的な障害によるもの、という認識しかなかった。だか、調べていくうちにうつ病がとても科学的、生理学的見地から研究、治療が行われていることを知った。人の精神、心理状態が深く生理反応と結びついていることは引用した文献から十分に理解出来た。
こうして調べてみると、うつ病は局所的なホルモンの異常というより、ホルモンバランスやホルモンの機構が崩れることにより起こる疾患だといえる。ただ、興味深いのは抗うつ薬によってホルモンバランスが数値上改善されてもうつ症状は改善されない患者が多々存在するということである。それが科学的に証明されていない生理反応的な背景があるのか、それとも人間の高度に発達した精神が全くことなる機序で働いているのかは定かでない。人体の奥深さが伺える疾患と言える。
しかし、講義のビデオを見ても文献を読んでも、思うことは一つである。たとえうつ病や様々な精神疾患であろうと、その原因が何であろうと、その苦しみを理解できるのは本人だけである.それでも患者がうつ病を治したいと思う限り医師は様々なアプローチを考え患者を完治へと誘導することが義務である、と私は思う。